『写真の読みかた』  名取 洋之助 著 1963

写真の読みかた (岩波新書)

写真の読みかた (岩波新書)

 写真の「読みかた」の本なのです。今ほど、写真の嘘が論じられていなかった時代に、こうすればこんな嘘が写真でつけます。といった「嘘のつき方」が実際の写真を使ってていねいに述べられています。今は、デジタル加工でもっと高度な嘘がつけると思います。
 メディアは、嘘をつくことがある。といった命題は、いつの頃から認知されたのでしょうか。「大本営発表」というのは、新聞やラジオを使った嘘。同時代的に、写真も多くの嘘をついてきた。それは、国のレベルでのはなし。戦後は、テレビが、嘘をつく時代。
 これは、視聴率のため。そして、いまは、インターネットが。目的は、多種多様。
 新しいメディアが創られたとき、当初は、純粋な技術者を中心に利用されていくけれど、それが、ある程度普及してしまうと、今度は、いろいろな人が出てきて、初めは、絶対に変な情報は流れなかったものが、そうではなくなってくる。メディアは、乗り物ですから、
乗っているものを拒めないところがあります。インターネットがどんどん普及している現在にはいろいろな「インターネットの読みかた」の本が出てきて欲しいと思います。
 メディアの向こうの人間に騙されないこと。そのためにどのような知識を成長過程のどの段階で身に付ければよいか。(といっても、メディアの発達は待ってくれませんが)学校教育でも、多くの時間を割いて、メディアの「読みかた」を学習させて欲しいなぁと思うのですが、果たして、どれほどの教師が「メディア」を語れるか。
 まずは、この本を読んで、もらいましょう。そんなんじゃ間に合わないかな。