書楼弔堂 破暁【合冊版】-【電子書籍】

古今東西の書物が集う墓場。
移ろい行く時代の中で迷える者達。
誰かが〈探書〉に訪れる時、一冊の虚(うそ)は実(まこと)になる。
明治20年代の本屋が甦る、新シリーズ!
 ーー立ち止まって眺めるに、慥(たし)かに奇妙な建物である。
櫓(やぐら)と云うか何と云うか、為三も云っていたが、最近では見掛けなくなった街燈台に似ている。
ただ、燈台よりもっと大きい。
本屋はこれに違いあるまい。
他にそれらしい建物は見当たらないし、そもそも三階建てなど然う然うあるものではない。
しかし到底、本屋には見えない。
それ以前に、店舗とは思えない。
板戸はきっちりと閉じられており、軒には簾が下がっている。
その簾には半紙が一枚貼られている。
近寄れば一文字、弔ーー。
と、墨痕(ぼっこん)鮮やかに記されていた。