『洞穴学ことはじめ』 吉井良三 著 1968

 高校の夏休みの宿題で課題の中に、この本の読書があったような気がする。
 私の「読書」の最初の出会いでありました。
 それからというもの、食費を削っても「読書」を買い、読みました。
 なぜ、そこまでハマったかというと、いくらかは忘れてしまったけれど、とにかく「安い」という印象。「角川文庫」がブレイクする直前ということだったのか、「知的読み物」っていう「新書」のスタイルがまだ「岩波」だけだったのか、はたまた個人的思いこみなのか。
 この文を書くために、久々に取り出した、この本、そうです「セロファン」が装着されているのです。いまは、紙製のツルツル・カバーですが、当時は「セロファン」だったのです。この「セロファン」の痛み具合で、その書店におけるその本の滞在時間がわかる。といった、非常に繊細なものだったのです。
 さて、内容はというと、五十メートルの洞穴内落下事故の話から始まっていて、椎名誠もどきの探検物語かと思いきや、ちゃんと学術的な話に持ち込むところは、さすが「岩波」的なのかも。でも、暗黒の洞穴(洞窟じゃないところが学術的?)の恐さを十分伝えきる、特に暑い夏には最適かも。夏休みの宿題にした先生のセンスを賞賛します。
 その高校の生物の先生は、蛾の専門家だということもあって、唯一覚えているその先生の言葉は、「蛾も昼間飛んでいれば、蝶と呼ばれ、人々に好かれていたかも」そんなことはないだろうと思うけど、学術的「オタク」そのもの。私は好感持ちましたよ。(ハハ・・)