短編小説礼讃

 岩波新書の86年出版されたものです。著者は、安部昭。彼の作品は読んだことがありませんが、短編小説を愛する気持ちが、伝わってきます。内容は、森鴎外モーパッサン、ドーデ、ルナール、菊池寛志賀直哉チェーホフマンスフィールド梶井基次郎魯迅、ヘミングウエーの短編について言及されています。かなり昔の人たちを言及しているところが、特徴でしょう。
 引用を一つ。

 主人公が死んでも、他の人間の生活は変わりなく続く。主人公亡きあとの長編小説が、何かにわかに風船がしぼむような淋しい終わり方をするのに対して、短編小説は主人公を宙ぶらりんの状態に置き去ることによって、いわば物語と読者に未来を与えるのだと言ってもいいだろう。P.138

短編小説礼讃 (岩波新書 黄版 347)

短編小説礼讃 (岩波新書 黄版 347)