『インターネットが変える世界』 古瀬幸広・廣瀬克哉 著 1996

インターネットが変える世界 (岩波新書)

インターネットが変える世界 (岩波新書)

 前半は、現在のインターネットの発展史。後半は、今後の方向性。一貫して、インターネットは、中央集権的システムでないということを述べている。
 キーワードは、「コンヴィヴィアリティ」(みんなでワイワイがやがやと楽しいという意味で、著者は「共愉」と訳している)であって、双方向性を活用したコミュニティーの場がインターネットであり、今後も分散型で、コンヴィヴィアリティしながら発展してゆくだろうと力強く語っている。
 今まで、インターネットが、反権力主義あるいは、権力のない状態で、現実的な路線で発展してきたのは、それを支えた人がいること。
 科学技術の進歩が身の回りの生活におりてくるには、最新の技術がいかに、生身の人間に役立つのかという、もう一つの発明(著者はそれを「戦略の周辺」といっている)が必要で、インターネットの根幹部分はエリート集団が作り、それを草の根集団が支え発展させて来たところに、今の爆発的なインターネットの発展があったという。
 この技術を、ここでこんな風に使うと、こんなおもしろいことが出来る。っていうのは、けっこう楽しいと思うんですよ。
 インターネットもそうですが、軍事目的で開発された現在位置を知るシステムも今は、カーナビとして民間に利用されているわけですし、NASA開発の・・・なんてのはけっこうありますよね。
 戦争によって、科学技術は進歩するという説がありますが、それは違うと思うんですよ。一つは、科学技術が進歩しているとき、戦争もやっていたってことで、戦争がなかった時代と科学技術が進歩しなかった時代ってのは今までなかったんじゃないでしょうか。
 二つめに、戦争で使う技術ってのは、とりあえず成果があれば見た目や使い勝手はどうでもいいといった、ユーザー本位(?)の発想だと思うんです。
 初期のインターネットもやっぱりそんな感じじゃなかったんでしょうか。そういった発明は実用性の高いものに磨き上げられてくると思うんです。
 三つめは、予算の取り方ですよね。戦争になると国家予算が投入されますから。でも、戦争がなくても国家予算を投入することは、可能だと思います。しかも戦争による偏った予算執行の不幸はいくらでも過去に存在するのではないでしょうか。