アンジェリーナ

佐野元春の10曲にインスパイアされた短編10作品を集めた1冊。
作家が物語を作っていくときに「エネルギー」としたものを表には見せないのが普通だが、今回は「この曲を聴いて作りました」的な構成。
バルセロナの夜」という作品は、死者と死者のかつての恋人と私のからみで、直接話せばいいことを「わたし」を通すまどろっこしさがあるものの、そこが「わたし」のドラマであるわけで、純文学的に考えると、なぜ「わたし」でなければいけなかったか。その疑問が作品を膨らませてくれます。